「ジャンボ」────。

 彼らの本当の名前は「BOEING 747」と言う。私たち日本人とジャンボが、世界的に見ても非常に縁深い関係だったことをどれだけの方が御存知だろうか。本来、国際線用として登場したジャンボが、国内線でも頻繁に使用されていた日本は非常に珍しい国だった。その為に、日本仕様なるSR型(Short-Range)、300D型、400D型などが登場し、日本は非常にバラエティーに富むジャンボ大国となった。

 もし、思い出深い旅客機を3つ答えろと言われたら、私は迷わず全日空のB727-200とB747-400、そしてB747SR/LRを挙げると思う。私は幼少時から田舎への帰省と言えば全日空の山形行きに乗るのが恒例行事だった為に、B727-200に乗る機会に大いに恵まれていた。当時はそれが当たり前過ぎた為、写真を一枚も撮ることがなかったのが悔やまれるが、あの均整の取れた美しいフォルムにトリトンブルーの塗装は未だに忘れることが出来ない。到着後の空港で727のコックピットを見学させてくれたことは一生の思い出で、今でもあの感動は鮮明に覚えている。当時の航空関係は今よりもずっと開放的でのんびりとしていた。

 この本は、全日空からB727-200が退役した際に販売された写真集「727 The Glorious Heritage」である。私は727が退役した10年後に、写真集という形で久々に全日空の727との再会を果たした。旅客機に憧れ、大空に夢を抱いた頃の記憶が甦った。この写真集だけは絶対に手放さずに守って行きたい。日本の空が本当に楽しかった時代を教えてくれる貴重な一冊だと思う。操縦経験の無い私が言うのも気が引けるが、飛行機というのは"人が飛ばすもの"なんだと思う。機械はあくまでも人の可能性の翼を広げる補助でなければならない。高性能化により補助から依存へと存在意義が変わってはいないだろうか・・・。

 裏を返せば、ローカル路線である山形便にしか乗れなかった私にとって、ジャンボは近くて遠い存在だった。どんなにジャンボに乗りたくても、乗るチャンスに恵まれなかった私はジャンボが憧れの飛行機になってしまった。いくら727や737、767に乗れても何処か満たされない思いで一杯だった。そして念願かなって初めてジャンボに乗ったのは確か小学生の時、千歳発羽田行きの全日空の747SRで、離陸時にその大きな機体がフワりと浮き上がり、森を眼下に上昇していった時の感動は今でも忘れられない。現実を目の当たりにしても、この巨体が大地を離れたことが信じられなかった。その後、一人で旅行が出来るような年齢になると、飛行機を使う際には必ず全日空のジャンボを利用したものだった。

 小さい頃に買ってもらったトミカのジャンボ。以前は他にも全日空のジャンボが2機、日航(旧々塗装)を1機持っていた。他にも送迎用バス、タラップ車、トラック、トーイングトラクターが付属していた。無粋にも細かいことを言ってしまうと、この模型のレジ番はJA8190であるから、本来ならSRではなく国際線用の200B型であるにも関わらず、All Nippon Airways の表記がないことや、エンジン形状がどう見ても、General ElectricのCF6-50E2ではなく、JALで採用されていたP&WのJT9D型である点など、下手に知識を付けた今となっては突っ込み所が満載であるが、この玩具が与えてくれた楽しい思い出は何物にも代え難い。

 そんな思い出の全日空のジャンボの中で、クラシック型と呼ばれる旧型のSR/200B(LR)型が退役するという話が私に舞い込んできたのは2005年のことであった。一時期、航空写真を撮っていた頃があり、言葉は悪いが、当時吐いて捨てる程に居た全日空のクラシックジャンボが消えるということは、私にとって大きな衝撃だった。過去に頻繁に撮影していた時も、クラシックジャンボが好きだった私は何枚もジャンボを撮影してはいたが、再び沸き起こった情熱を抑えることは出来ず、羽田詣が始まったのであった・・・。

 結果的に、撮影再開後は白黒、カラーネガ、カラーリバーサルフィルムを合わせて、1500カット以上、約フィルム60本分を撮影した。しかし、人様にお見せ出来るような写真は1割にも満たない。今回はその僅かな写真と、過去に撮影した写真を順次公開して行こうと思う。どの写真も、お世辞にも上手いとは言えないものばかりです。これは私の「全日空747SRに燃えた日々」の記録です。

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  B747-SR81 B747-SR81 B747-281B
全幅 59.6m
全長 70.5m
全高 19.3m
最大離陸重量 263.9t 340.5t 377.8t
最大着陸重量 255.8t
巡航速度 880km/h 900km/h
航続距離 2590km 2590km 11700km
エンジン GE CF6-45A2 GE CF6-50E2 GE CF6-50E2
エンジン推力 21,090kg × 4 23,810kg × 4

 

作者紹介

10年以上前の写真。山形行きのA320で着陸後に機長に撮って貰った一枚。例のハイジャック事件以降、コックピットの見学がとても厳しくなり、殆んど諦めていたこから、とても嬉しいプレゼントだった。客室乗務員の方に離陸前にお願いし、飛行中に「着陸後しばらく待っててくださいね」と告げられた時は、自分にとっては約6年ぶりの見学だったこともあり、飛び跳ねるくらいに嬉しくて、本当にもうワクワクドキドキだった。今でも見学を快諾してくれた機長(かなり御年配の方)と、親切に色々と教えてくださった副操縦士の方には心から感謝している。

オトナの事情で見学を規制したいのは分かるけれど、小中学生とかには是非とも見学させてあげて欲しいな。1つ1つの計器やスイッチの意味が分からなくても、子供心に物凄く感動するものがあると思う。その感動が、その人の将来を決定付けることもある。パイロットという職業は今でも花形、何時までもファンや小さな子供に夢を与えてくれる存在であってくれることを祈ります。

思い出話